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スーパー早期審査の活用

松尾卓哉 | 2023/01/03

早期審査制度


企業規模にかかわらず、実務において早期審査制度がよく利用されています。
新商品のパッケージに特許取得済表示をして販促につなげたい、早期審査で通知された拒絶理由を考慮して
外国出願用の請求項を再構築したいなど、理由は様々です。
通常の審査期間が審査請求から一次審査通知(最初の拒絶理由通知又は特許査定)まで平均9~11ヶ月であるのに対し、
早期審査を利用すれば3ヶ月以内に短縮されます。
早期に特許査定が確定したとしても、分割出願しておけば、また別の観点で広い権利を狙うこともできます。
このため、早期審査は特許戦術の一つとして活用されています。

スーパー早期審査


早期審査の中でさらに審査期間を短縮可能なスーパー早期審査があります。
スーパー早期審査を利用すれば申請から平均1ヶ月以内に一次審査通知がなされます(2022年現在)。
もちろん、一次審査で拒絶理由が通知されれば、その応答と再度の審査を要するため相応の時間はかかりますが、
通常の審査に比べればかなり早期の権利化が可能です。
出願がスーパー早期審査の対象となるためには一定の条件を満たす必要がありますが、ベンチャー企業に関しては
その要件が幾分緩和されています。
※要件の詳細はこちら:スーパー早期審査の手続について(特許庁)
このため、特にベンチャー企業は新商品の発表時期から逆算して権利化までのスケジュールを立てやすいと言えるでしょう。

事例


最近の事例(特許7075165号)を一つ紹介します。

出願人は、2022年2月に設立されたベンチャー企業であり、当事務所のクライアントです。
会社設立後間もなく、社長さん自らサンプル等をもって相談にこられました。
透明度の高い綺麗な氷が得られる製氷器を開発したので、販売までに特許を取得したい…。
本製品に込めた熱い思いをお聞きした後、発明に関するブレストを行い、どのような方向で権利取得をするか、
どのようなスケジュールを目標にするかなどを話し合いました。
そして出願明細書を作成し、以下の経過をだどりました。

2022.3.28:出願と同時に審査請求、スーパー早期審査申請
2022.4.12:「スーパー早期審査の対象とする」旨の通知とともに特許査定
2022.5.17:特許登録
2022.5.25:特許公報発行

なんと、出願から約二週間で特許査定に到ったのです。
予め公知技術の分析をしたうえで権利化のポイントを定めるなど、入念に準備をしたことも功を奏しましたが、
特許査定に致るまでの期間は当事務所でも最速記録を更新しました。
このような経緯を経ることで、特許技術が反映された商品として製造販売に到りました。
※実際の製品はこちら:ice drops(プロモーションを含む)
クライアントからプレリリースの一報を受けた後、筆者自身も本製品を購入して製氷してみましたが、
期待どおりの氷ができ、グラスにお酒を注いだときにその透明度が一層増す様子をみて感動しました。
本件は特許査定とともに分割出願も行っており、当事務所としても、この技術が特許で守られたビジネスとして
成功するよう今後も関わっていきます。