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ビジネスモデルで特許を取るコツ

三谷拓也 | 2023/08/05

ビジネス方法の特許


ビジネスモデル特許は、英語ではBusiness Method Patent(ビジネス方法についての特許)といいます。

特許庁は、ビジネス関連発明を「ビジネス方法がICT (Information and Communication Technology:情報通信技術) を利用して実現された発明」と定義した上で、ビジネス関連発明は特許の保護対象になる、と説明しています。

ビジネスの方法とは?


ビジネスの方法というのはさまざまです。

具体的には・・・

・新しい集客方法を考えた
・ある情報をマネタイズする方法を考えた
・広告宣伝の方法を考えた
・顧客満足度を高める方法を考えた
・顧客満足度を測定する方法を考えた
・顧客に負担のかからない予約方法を考えた
・人の動きを誘導する方法を考えた
・人材の育成方法を考えた
・人材の評価方法を考えた
・人材の採用支援方法を考えた
・取引相手の安全性を評価する方法を考えた
・新しい金融商品を考えた
・資本回転率をアップさせる方法を考えた
・農作物の管理方法を考えた
・患者に合う医者を探索する方法を考えた
・従業員の環境意識を高める方法を考えた
・発明を促す方法を考えた
・・・など。

いろいろなビジネスの方法がビジネスモデル特許の候補になります。

ビジネスをしていると、日々、いろいろなやり方を考えているはずです。
新事業のように大がかりなものもあれば、通常業務のちょっとした改善案もあると思います。

とはいえ、新しいビジネス方法のうち実際に特許出願されるものはごく一部です。
その理由としては、ビジネスの方法が特許になることを知らない、過去にビジネスモデル特許出願をしたことはあるが特許審査で瞬殺されたので懲りた、ビジネスモデル特許を取ったことはあるけれどもなんの効能も感じなかったので冷めた、などが考えられます。

ビジネスモデル特許を取得するためには、技術系の特許と同じくらい、もしかしたらそれ以上に入念な検討作業をする必要があります。
 

基本のアイディア


たとえば、飲食店のリピーターを増やしたいと考え(目的)、何度も来てくれるお客さんにはプレゼントをあげるというビジネスの方法を考えたとします(手段)。


このビジネス方法についてソフトウェア(ICT)をからめて表現すると、

・お客さんにユーザID(会員番号)を付与する。
・データベースに、ユーザIDと来店回数を対応づけて登録しておく。
・支払いのときにユーザIDを提示してもらい、来店回数をカウントアップする。
・来店回数が所定の閾値(たとえば、10回)に達すると、店員にこのお客さんにプレゼントを渡すべしと指示する。

という情報処理システムとして表現できます。

ここまでイメージが固まったら、特許出願はできますが、ここで終わりにせずにもう少し検討をします。

追加のアイディア


たとえば、男性以上に、女性の集客を強化したいとします。
そのために、男性は来店回数が10回でプレゼントをあげるが、女性なら来店回数が7回でプレゼントをあげるとします。
こういう発想を応用すると、子どもを優遇したい、40代を優遇したい、浴衣を着ている人を優遇したいなどいろいろなパターンが考えられるので、「ユーザ属性に応じて閾値を異ならせる」という追加のアイディアとしてまとめることができます。

このほかにも、

・画像認識技術によりユーザ属性を判定してもよい。
・ユーザが誕生月に来店したときもプレゼントしてもよい。
・閑散期や悪天候時に来店してくれたらプレゼントしてもよい。
・複数の閾値を設定する。10回目の来店時のプレゼントと、20回目の来店時のプレゼントを異ならせてもよい。
・商圏拡大のため、遠方から来てくれたお客さんについては閾値を下げてもよい。
・来店回数ではなく、合計の支払金額が閾値を超えるとプレゼントをするとしてもよい。
・来店回数が多くなるほど当りやすくなる抽選を実行してプレゼントをあげるかどうか決めてもよい。

・・・のように、元のアイディアからいろいろな方向に連想を展開させていきます。

基本のアイディアに対して小ネタのようなアイディアをたくさん盛り込むことで特許明細書は充実しますし、特許査定になる確率も格段に向上します。

来店回数が閾値を超えたときになにか特典を与えるという内容を開示する先行文献を見つけるよりも、ユーザ属性に応じて閾値を変化させるという内容まで開示する先行文献を見つける方がはるかに難しいからです。

多額の費用をかけて特許出願をするのですから、ほかのやり方はないか、ついでにやりそうなこともないか、少しだけ時間をとって考えてみます。
なにかひらめいたあと、そのアイディアについてもう少し検討を続ける作業の価値は一般に思われている以上に高いのです。

1つのアイディアから多数の小ネタ


クライアントからビジネスモデル特許の依頼があったときには、それはいいアイディアだし特許になる可能性はあるけれども、せっかくなのでもう少し追加してみませんかといつもお話しています。
小さなアレンジを追加することで特許査定になる確率は高くなりますし、このようなアレンジをしておけば侵害回避をしづらい特許、潜在的競合が意識せざるを得ない強い特許に仕上げやすくなります。
いろいろなアレンジを考えているうちに、元のアイディアの本当のよさや社会的意義などの可能性が見えてくることもあります。

請求項1(独立項)で基本アイディアについて権利請求し、請求項2以降(従属項)でいろいろな追加アイディアをトッピングしておきます。

出願段階では、請求項1はチャレンジなので特許査定になればラッキー、請求項2で特許査定にできれば充分、請求項3ならおそらく特許査定になる、請求項4は絶対に特許査定にしたい最終防衛ライン・・・というイメージをつくっておきます。

1つのアイディアから多数の小ネタをつくって多段構えにしておけば、きっと特許査定になる、と自信をもって特許出願できます。

参考:「ビジネスモデル特許とは何か」「従属項をなぜ作るのか