第1印象をつくるのは頭が楽をするためです。
第1印象は基準視点をつくる一方、想像力の働く余地を少なくします。また、第1印象は、ありきたりの視点になりがちです。

想像力を働かせるためには、別の視点から問題を眺めてみる姿勢が必要・・・とマハルコはいいます。
発明のアイデアを出すときにも、最初に思いついた問題の捉え方にとらわれず、問題を別の言葉で表現し直すことが有効です。
本稿では、「問題を言い換える」「言葉を変える」「立場を変える」という3つの発想法を紹介します(固定観念となっている前提そのものを疑う発想法についてはこちら)。
発明の課題を言葉にする
まず、何が問題なのか、何を解決したいのかを言葉にします。
発明の場合、問題を定義することは発明の目的を明確化することでもあります。
発明によってどんな目的を達成したいのか、どんな問題を解決したいのか、を明確にします。
実現方法を考えるのはその次です。
誰をハッピーにしたいのか、どんなことがハッピーと感じられるのか、を考えてみるのも一つの有力なアプローチです。
「誰が、どんな場面で、何に困っているのか」と具体的に問いかけると、発明によって解決すべき課題が見えやすくなります。
次に、問題を別の言葉で言い換えてみます。
問題をいろいろな言葉で表現することにより想像力が刺激され、解決策を思いつきやすくなります。
マハルコによれば、アインシュタインも、レオナルド・ダ・ビンチも、ファインマンも、アリストテレスも、意識的に問題を別の言い方で表して新しい視点を見つけるように心がけていたといいます。
問題を言い換える方法
問題の言い換え方について、マハルコはいくつかの方法を紹介しています。
(1)部分を切り離す
問題の要因を洗い出します。要因の要因、要因の要因の要因・・・と分解していきます。その上で、各要因について「なぜそうなったのか」を問います。
たとえば、「新製品の売り上げが低迷している」という問題があれば、低迷の要因を「人」「マーケティング」「手順」「製品」のように分けてみます。
「製品」について「デザインが悪い」「製品のリリースが遅れた」などの要因を抽出します。
そのうえで、「なぜデザインが悪いのか」という問いかけをしたとき、「消費者の意見をきちんと取り入れようとしなかったから」という考えに至ったとします。
新製品の売り上げが低迷しているという問題を、デザインが悪いという別の問題に言い換えることで、「消費者の意見をもっと取り入れてみよう」という解決策(アイデア)を出すことができます。
大きく漠然とした問題を小さな問題に分解すると、具体的な発明のテーマを見つけやすくなります。
(2)言葉を変える
問題は「新製品の売り上げが低迷している」であるとします。この問題に対する問いかけは「売上を増やすにはどうしたらいいか」です。この問いかけの言葉、特に、動詞を変えてみます。
・売上を惹きつけるにはどうしたらいいか
・売上を広げるにはどうしたらいいか
・売上を保つにはどうしたらいいか
・売上を循環させるにはどうしたらいいか
・売上を新しくするにはどうしたらいいか
・・・のように言葉をどんどん転回させます。
言葉を変えることで、視点が変わり、新しい考え方やアイデアに結びつく思考プロセスにスイッチが入ります。
言葉は想像力を刺激します。
(3)立場を変える
子ども、高齢者、初めて製品を使う人、製品を修理する人など、普段とは違う人の立場になって考えてみます。その人だったら、この状況をどう見るだろうかと考えることで、問題に対する違う視座を得ることができます。発明をするときには、利用者の視点、投資家の視点、生産者の視点などさまざまな立場から発明を眺めてみます。
アインシュタインは、電子や光線になったつもりで問題を考えることで相対性理論を思いついたといいます。問題の中に入り込むことで、アイデアが発見されることもあります。
自分以外の視点を得る方法として、生成AIに利用者、開発者、製造者などの立場を与えて質問することもできます(生成AIと一緒に発明のアイデアを考える方法についてはこちら)。
ポケモンを生んだ「交換する」という動詞
前述した「言葉を変える」という発想法の実例として、ポケットモンスター(ポケモン)の誕生に関するエピソードがあります。
田尻智は、インベーダーゲームには撃つ、パックマンなら食べるというように、画期的なゲームにはキーになる動詞があると分析しました。
そして、新しく発売されたゲームボーイ(昔の携帯型のゲーム機)の通信機能から交換するという動詞をひらめき、これが「ポケットモンスター(ポケモン)」の企画につながったといいます。
ポケモンは、昆虫採集のようにモンスターを集めて、友だち同士で交換できるというコンセプトが受けて大ヒットとなります。
ポケモンの面白いところは、単に「通信機能を使ったゲーム」を考えたのではなく、「交換する」という動詞からゲームの体験を組み立てた点です。
たとえば、製品について「測る」「動かす」「表示する」と考えているのであれば、それを「予測する」「避ける」「共有する」「育てる」など、別の動詞に置き換えてみます。
動詞を変えることで、同じ技術から別の機能や新しい発明が生まれる可能性があります。
問題の言い換えから発明を見つける
「問題の表現とその言い換え」は発明のきっかけになります。
第三者(知財部や弁理士など)にとっても、問題(発明の目的)の表現とその言い換えは、発明の意義や価値に対する認識を深めます。
アイデアを出すための会議や、発明を深耕・展開するための会議のときにも、テーマ(問題)さえ明確であれば、問題を掘り下げたり転回させたりすることで、当初は思ってもいなかった地点まで到達できることもあります。
発明のアイデアが出ないときには、いきなり解決手段を考えるのではなく、まず順番に問い直してみます。
1.何が問題なのかを言葉にする。
2.問題を分解し、別の言葉や動詞に置き換える。
3.利用者、製造者、販売者など、別の立場から問題を見る。
新しい問題の捉え方が見つかれば、それまで思いつかなかった解決方法も見つかる可能性があります。問題を発見し、解決策を考え、それを技術として説明できれば、発明になります。
※課題の発見、解決方法の発想、技術的な説明という「発明の3つの才能」についてはこちらの記事で説明しています。