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死んだ特許を復活させる

三谷拓也 | 2019/11/04

実現可能性と普及可能性


先進的な発明であるほど、社会にいつ受け容れられるかを予測しづらくなります。

完全自動運転車、宇宙エレベータ、筋電義手、空飛ぶ車、情報銀行・・などは、技術的には可能といわれていますが、技術を普及させるために解決すべき課題も多いため、いつ産業化できるのかわかりません。

社会的な課題を抱えていようとも、技術的に実現可能な発明であれば特許権を取得できます
その一方、特許権の寿命は20年なので、発明がビジネスとして成立する頃には特許権の期限が満了してしまうかもしれません。

たとえば、宇宙エレベータ関連の発明で特許権を取得しても、20年以内に宇宙エレベータの建設がはじまらなければこの特許権は宝の持ち腐れになってしまいます。


発明に実現可能性があれば特許権を取得できますが、普及可能性がなければ特許権の価値は高まりません。

発明をアレンジする


先進的な発明で特許権を取得したが、発明がブレイクする前に特許権が切れてしまった。それでも、この発明が社会に受け容れられる日は遠くないはず。
こういうときには、同じ特許権をもう一度取得したくなりますが、同一発明で特許権を2回もらうことはできません。

それでも、発明を再検討することにより、死んだ特許権を実質的に復活させることができることがあります。

ある発明者Sが発明A1を考え、特許権P1を取得したとします。
しかし、発明A1は先進的すぎたため、発明A1が社会に受け容れられることなく特許権P1が失効したとします。

こういうとき、発明A1を製品実装するとしたら、どうしても必要になりそうな補完的な技術がないかを検討します。発明者Sは、発明A1の必須補完技術として発明A2を考えたとします。
発明者Sは、発明(A1+A2)について特許出願をします。発明A1は先進的なので、発明者Sがこの技術に関しては第一人者です。
発明A1の問題点に気づいて、それを解決するために発明A2を考えるような人はほかにいないので、発明(A1+A2)についても特許権P2を取得できる可能性は高い。

発明A1を実施するには発明A2がどうしても必要なので、特許権P2は特許権P1とほぼ同価値です。
この結果、特許権P2により、発明A1の独占期間を実質的に延長できます。

特許権P2は特許権P1の復活(生まれ変わり)とみなすことができます。
 

安全機能で延命する


具体例として、発明者Sは、ある合金Xに電流を流すと合金Xの性質が変化することを発見したとします。
合金Xに電気エネルギーを与えるほど、合金Xの性質はどんどん変化していきます。
発明者Sは、「合金Xを通電させる電気回路(発明A1)」を考え、特許権P1を取得します。
特許権P1により「合金Xを通電させると合金Xの性質が変化する」という発見に関わる工学的可能性をまるごと独占できます。

しかし、コストの問題など、なんらかの事情により、発明A1が普及する前に特許権P1が失効したとします。

合金Xに電気を流すと合金Xは発熱します。
無制限に合金Xに電気を流すと危険であるため、発明者Sは、「合金Xへ通電量を制限する安全装置(発明A2)」を考えます。

発明者Sは、発明(A1+A2)について特許出願をします。
合金Xに電流を流す研究をしているのは発明者Sくらいしかいません。
合金Xに電流を流すときの問題点に気づいている人もいませんので、発明(A1+A2)についても特許権P2を取得できる可能性が高いはずです。

この発明のポイントは、「合金Xに電流を流すときに注意すべきことがある」という課題認識にあります。

発明者Sは、「合金Xを通電させる安全機能付きの電気回路(発明A1+A2)」について特許権P2を取得します。

合金Xを通電させる電気回路をつくる場合、安全装置なしの実装は想定しづらいため、特許権P2は「合金Xを通電させると合金Xの性質が変化する」という発見に関わる工学的可能性を実質的に独占できます。

 発明を末永く独占する


一般的には、多くの人から注目されている技術分野では特許権を取得するのが難しくなります。
一方、注目度の低い技術分野は特許権を取得しやすいため、延命措置をとりやすくなります。
また、先進的な発明は、商品化のための課題が見えていることも多く、発明の種を見つけやすい傾向があります。
 
いままでにないモノを発想するだけでなく、古い発明をリニューアルするという発想からも発明は生み出されます。

参考:「未来を予測した特許出願」、「野口五郎さんの特許戦略