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アイディアの出し方(3)

三谷拓也 | 2020/10/11
創造性開発コンサルタントであるマイケル・マハルコ(Michael Michalko)の著書「アイデアのおもちゃ箱(Thinkertoys:ダイヤモンド社)」は、さまざまな発想法を紹介しています。

その中のひとつがSCAMPERという発想法です(この発想法自体はマハルコの発案ではありません)。

SCAMPERは、

・S:Substitute(代用)
・C:Combine(結合)
・A:Adapt(応用)
・M:Modify, Magnify(修正・拡大)
・P:Put to other uses(別用途)
・E:Eliminate or minify(削除・削減)
・R:Reverse, Rearrange(逆転・再構成)

という「7つの問いかけ」の頭文字を集めたものです。


7つの問いかけは厳格な区分ではなく、重なり合う面もあります。
SCAMPERとは7つの観点から問いかけてみるという規準です。
 

Substitute(代用)


別のもの、別のやり方に変えたらどうなるだろうか、と問いかけてみる思考法です。
ショッピングカートは「買い物かごの代わりになるものはないか(もっとたくさんの商品を売ることができないか)」という問いかけから発想されたものです。
ショッピングカートの発明により、買い物客は一度にたくさんの品物を買えるようになりました。

Combine(結合)


あるものに、別のものを結びつけて新しいものを創り出す、という思考法です。
スマート・トイレは、家庭用トイレに、血圧や体重等の測定装置を結びつけたものです。トイレを使うときに健康診断ができます。
 

Adapt(応用)


ある場面に使われているアイディアは別の場面にも使えないか、を考えてみる思考法です。
ブロックチェーン技術は、もともとは仮想通貨取引を想定した技術ですが、物流業界への応用も可能です。
弁理士をやっていると、クライアントAのアイディアは、クライアントAとは違う業界にいるクライアントBの問題解決にも使えるのではないかと思うことがよくあります。

マハルコは、すべての発明はある程度は借り物なので、オリジナリティのある考え方をするためには、まず、他人の考え方に精通すべきであるといいます。

M:Modify, Magnify(修正・拡大)


拡大する、誇張する、頻度を増やす、付加価値をつける・・・という観点から検討します。
アイボリーソープは、アイスクリーム製造機をつかって、石鹸に空気を付け加えることにより発明されました。アイボリーソープは、水に浮かぶ石鹸であり、泡立ちがきめ細かくなります。
 

P:Put to other uses(別用途)


他の利用法・他の使い途を考える思考法です。「Adapt(応用)」に似ている面もあります。
あるトイレットペーパー製造業者は、仕入れた紙のうちの一部の紙が厚すぎてトイレットペーパーにできない、という問題に直面し、その使えない一部の紙からペーパータオルを発明しています。
おがくずを圧縮すれば暖炉用木材となり、廃棄タイヤは燃料になります。
リサイクルは「Put to other uses(別用途)」に近い発想です。

Eliminate or minify(削除・削減)


対象を縮小してみたり、一部を取り去ってみる、という思考法です。
たとえば、ドーナツの真ん中に火が通っていないのに気づいた少年が、ドーナツに穴を開けることを思いついて、今のリング型のドーナツになったといいます(諸説あります)。

Reverse, Rearrange(逆転・再構成)


組み合わせや順番を変えてみる、逆さまにしてみる、という思考法です。
ゼロックスは高額なコピー機を売るのではなく、コピー代を徴収する方式により、コピー革命を起こしています。
価格決定のメカニズムを再構成したといえます。

ウォークマンの発明


マハルコは、SCAMPERのエッセンスを多分に含んだ商品としてソニーのウォークマン(携帯型音楽プレイヤーの元祖)の開発経緯を紹介しています。

まず、ソニーの技術者は、テープレコーダーを小型化しようとしたところ、録音ができないものにしかなりませんでした。
井深大(ソニー創業者)は、別プロジェクトで開発中だった携帯型ヘッドフォンとこのテープレコーダーを組み合わせることを思いつきます(Combine)。
その上で、井深は録音機能をいっそ省いてしまい音楽だけ流す商品というコンセプトを考えます(EliminateとReverse)。
井深は、これをテープレコーダーではなく、新しい娯楽のコンセプトとしてイメージし(Put to other uses)、ヘッドフォンをつければ音質を高められると判断します(Magnify)。

ウォークマンは最初から企画されたものではなく、当初は、テープレコーダーの小型化を開発目標としていたようです。
小型化のためにやむを得ず録音機能を諦める、というマイナス部分からテープレコーダーとは違うコンセプトを創り出すことで、録音できないという問題を解決することなく解消しています。
この新コンセプトに「ヘッドフォン」というアイテムを追加することで、「音楽を持ち運ぶ」「活動しながら音楽を聴く」という新しい文化が創造されます。

テープレコーダーにSCAMPER的思考法が適用されていくことによって、新しい市場の創造にまで至っています。

SCAMPER(7つの問いかけ)


SCAMPERは思考の軸線になります。
SCAMPERはあくまでも一つの方法論ですが、多くの思考パターンを簡潔に網羅する優れたチェックリストであると言えます。

現在の技術に対してSCAMPERを適用してみれば、改良点が見つかることもありますし、もしかしたらウォークマンのように新しい需要を掘り起こすことができるかもしれません。

参考:「アイディアの出し方(2)」「アイディアの出し方(1)